2020年3月18日放送の「NHKガッテン」では、「火災・食中毒・入れ歯よくぞそこまで!体当たり研究者SP」と題して、私たちの暮らしに役立つ研究のために体を張って新発見を成し遂げた専門家の方々が集結しました。
食べ物の安全や品質管理についての研究を50年以上も続けてきた、東京家政大学大学院客員教授の藤井建夫さんにお話をうかがいます。
レトルト食品と真空パックって見た目がソックリですよね。でも、製法も保存方法も全く違うんです。
注意しないと、健康被害にあうおそれも。
クサヤに魅せられて食品微生物学の研究に没頭された藤井先生から、食品中の微生物の働きと見落としがちな食品保存の危険を教えていただきます。
レトルト食品と真空パックの違い
レトルト食品は、中心温度120℃4分以上と、加圧加熱殺菌の条件が決められています。
高温高圧の条件下で腐敗や食中毒の原因になる菌を殺菌するためです。これにより、未開封の場合は常温保存が可能です。
これに対し、一見レトルト食品のようにみえる真空パックなどの密封食品は味や食感を保つために高温高圧処理がされていません。殺菌レベルが低いために、開封前でも冷蔵庫保存が必須です。
真空でも過信は禁物
真空ってきくと、菌なんていないような気がしますが、酸素のない状態でも生きられる菌はいます。
要冷蔵の食品を常温で保存すると、食中毒菌が繁殖する恐れがあります。
ボツリヌス菌やウェルシュ菌などです。とくに、ボツリヌス菌は重篤な症状を引き起こすことがあり、注意が必要です。
開封前 | 開封後 | |
レトルト食品 | 常温保存 | 要冷蔵 |
真空パック | 要冷蔵 | 要冷蔵 |
見分けるポイント
商品に「要冷蔵」と保存法が表示してあります。買ってきたらしまう前に必ず確認しましょう。「要冷蔵」と書いてある場合はかならず冷蔵庫で保存します。
塩蔵品でも冷蔵庫へ
昔ながらの塩辛は塩分濃度が10%以上あり、熟成などでうまみが増し、常温保存が可能でした。
最近では、塩辛いものが好まれなくなり塩分濃度が2~3%の塩辛を調味料で味付けしたものが多くなっています。常温で放置すると、腐敗菌や食中毒菌が繁殖することが!
商品に「要冷蔵」と書いてあるときは、必ず冷蔵庫で保存しましょう。
大量の塩を使えば腐らない!は非常識?
塩は食品中の水分を抜くことで腐りにくくする、というのは研究者の間でも昔は、常識でした。
藤井先生もその一人で、秋田県の「しょっつる」を使って実験を行っていました。
ところが、常温で2週間しょっつるを放置していたら、開けてみると中身ががぷしゅーと噴き出したというのです。
「しょっつる」とは、ハタハタなどの魚を塩につけ、分解してできた液体を取り出したもので、塩分濃度は25%以上になります。
かなり塩辛いから腐らないはずなのに、なぜ?
これが、塩辛いものは腐らない、という常識を見事に覆す発見につながりました。
塩分濃度が15%以上で増える好塩菌が原因でした。
この藤井先生の研究をもとに、今では加工現場でも製品の塩の状態を細かく管理する方法がとられ、安全な商品が提供されています。
藤井先生が魅せられたクサヤの秘密とは?
クサヤ液は塩と水だけでできており、室町時代から塩を継ぎ足して使われ続けているものもあるとか。
焼いたときのニオイは強烈ですが、食べてみると深い味わいがあります。
藤井先生の大発見は、このクサヤ液に含まれる微生物の働きにありました。
同じ塩分濃度の塩水につけたものより、日持ちが2倍になるというのです。また、クサヤ作りを行っている加工場の人は手にけがをしても、化膿しないそうです。
くさや液の中には、抗生物質的なものをつくる微生物が存在し、漬けている間、腐敗菌の増殖が抑えられることがわかりました。
つまり、特殊な環境下で生きている微生物たちが外から入り込む人体に有害な微生物の増殖を阻止していたのです。
レトルト食品と真空パックの違いは保存方法に要注意!まとめ
真空だから菌が繁殖しない、塩辛いものは腐らないという常識から、まちがった食品保存の落とし穴にはまってしまうところでした。
真空でも生きられる微生物、塩分濃度の高いものを好む微生物が存在することを知って正しく食品を保存しなければいけないですね。
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